本コンソーシアムは衛星観測データに基づく太陽放射データ等の利用を通じて社会への貢献を果たすことを目指して設立されます。これまで気候研究の分野で培われた放射を取り扱う技術の研究成果を広く多くの分野へ提供し、他分野と相互の協力を高めることで新しい科学と技術の可能性を模索します。また、様々な分野の企業と協力し高い技術力を広く社会へ役立てるための活動を展開します。 日射量は気象・気候における基礎的な物理量の一つですが、衛星観測に基づく日射量は面的な分布の情報を持つためエネルギーや農業における利用などが考えられています。今現在、日本は東日本大震災を転換点として大きな変化を促されており、これまでより多様で強固な社会インフラの構築が求められています。特に震災によって顕在化したエネルギー問題に関して再生可能エネルギーへの関心は高く、太陽光発電・太陽熱利用など、地球に降り注ぐ太陽エネルギーの利用は急速に技術開発が進行している重要な時期にあたります。また、面的な日射量データは農作物の育成状態の把握と収量予測の基礎データにも応用が可能であることから、農業利用も含めた食料安全保障への貢献もひとつの目標となります。今まさに、様々な分野の連携が必要とされており、分野の壁を取り払って密に連携し結果に繋げて行かなければなりません。従って、本コンソーシアムは再生可能エネルギー(太陽光 発電、太陽熱利用)、農業利用、食料安全保障など他分野へ応用可能な太陽放射データ、即ち面的日射量のデータを必要とされている皆様へ広く提供することで太陽放射利用の礎とします。また、積極的に産学官の連携を促進して最新技術を取り入れた研究・ビジネスの展開を推進し社会の活性化に貢献します。さらに、世界への貢献として、この活動を世界展開することで人類を豊かにするための科学と技術のあるべき姿を模索します。
キーワード IPCC-SRREN、PV2030+、太陽光発電、太陽熱利用、食料安全保障、農作物収量、バイオマス
太陽放射は地球表層の気象・気候を駆動する唯一のエネルギー源です。地球は太陽放射を受けて温まる一方で、その温度に伴う地球放射(赤外放射)によってエネルギーを宇宙に射出しています。これら加熱と冷却の作用によって地球は生物が生存可能な環境に保たれています。地球表層の環境を現在の状態に保っているのは大気ですが、大気が持ってると考えられている地球のエネルギー収支に対する効果は未だ定量的に解明されてません。特に雲は太陽放射を反射し地球を冷却する効果と地球放射を吸収・再放射することで地球を保温する効果を併せ持ちますが、雲の発生・発達は蒸発散や降水など地球大気系の水循環をはじめとする他要素との複雑なフィードバック結合によって関係づけられるため、雲の気候に対する効果の定量的な評価は難しいものとなっており気候研究において重要な問題として位置づけられています。 地表面における下向き太陽放射、即ち日射量の推定は古くから様々な手法で試みられていますが、気象学の分野における日射量の推定は大きく三つの手法に分類されます。
- 1.実観測値に基づく回帰分析モデル。地上に設置した日射計によって観測された日射量と気象場のパラメータを結びつけ、統計的に大気の透過率を表現することで日射量を計算する手法。計算量が少ないため高速に作動する点に優位性がありますが、明確な物理モデルを持たないため対応条件には限界があり、観測値に依存するため回帰分析として変化に対し常に統計を取り続ける必要があります。また、統計と異なる傾向を持つ場所への適用は困難です。
- 2.太陽エネルギーの分配を記述したエネルギーフローモデル。太陽から降り注ぐエネルギーが大気の各要素に減衰されて地上に到達するまでのエネルギーフローを1次元、もしくは0次元で記述した簡易式を用いて日射量を計算します。エネルギーフローのみを取り扱うため大気の各要素における波長特性を考慮することは出来ません。
- 3.大気要素の波長特性を考慮した放射伝達モデル。太陽から地球大気上端に到達した太陽放射は水蒸気やオゾンなどの吸収ガスや雲粒子など大気中の微粒子によって吸収・散乱され地表面に到達する。これを電磁波の放射伝達理論に基づいて各波長ごと、大気層ごとに計算する。 放射量の厳密解が得られるが、他の手法と比較すると非常に長い計算時間が必要となる。
本コンソーシアムでは気候研究における放射コミュニティによって長年培われた技術である放射伝達モデルによる解法に基づいた太陽放射解析結果の利用を推進します。日射量に対する最大不確定要素である雲粒子の光学特性は静止衛星観測データから逆解析によって取得します。また、放射伝達計算による計算時間の問題は高速に作動するソルバーを開発することで解決しました。これにより、静止衛星の観測頻度にあわせた解析が可能となり、準リアルタイムにて太陽放射量データを提供することが出来ます。
再生可能エネルギーへの応用
太陽光発電は地球に降り注ぐ太陽放射を電力に変換する発電手法です。発電時に温室効果ガスを排出することがなく、同様に発電時に発電に伴う廃棄物、冷却などによる排水・排気、作動に伴う騒音・振動等も発生しません。そのため建物など電力需要地点に直接設置可能であることから、都市域や一般家屋も含め小規模な電源として分散設置することが可能となります。太陽熱利用は太陽放射による熱エネルギーを熱媒体を通して給湯や冷暖房、または発電に利用するエネルギー利用法です。一般的にエネルギーを熱に変換することは容易であることから太陽熱利用は高効率である特徴を持ちますが、蓄熱によるエネルギー保存によって短時間のエネルギー貯蔵が可能であるという長所を持っています。厳密には再生可能エネルギーの定義は複数存在しますが、IPCCの定義による再生可能エネルギーとしては太陽光発電、及び太陽熱利用は気候変動緩和策の一つとして期待されています。日本の太陽光発電累積導入量は2008年において2.17GW程度ですが、長期的な温暖化対策として2050年において173GW程度の導入が必要と試算されており、太陽光発電ロードマップPV2030+では2025年における導入目標を102GWと定めるなど積極的な利用が推進されています。特に夏季日中に電力需要のピークが重なることから、ピーク時の電力供給に効果を持つと考えられています。また、火力・水力 等の発電設備と異なり設置に際して長期に渡る工事を必要とせず小型化も容易なことから、東日本大震災直後に一部地域において夜間の懐中電灯の充電や携帯通信機器の緊急の電力源としての役割も担いました。また、現在においてはHEMSやBEMSといったエネルギー制御のアプローチも増えつつあります。東日本大震災以降、電力のベストミックス構想によって太陽光発電・太陽熱利用の導入は加速していますが、そのための様々な技術開発は今まさに現在進行中です。本コンソーシアムでは再生可能エネルギーにおける太陽光発電、太陽熱利用のための新しい技術開発とその導入・運用に資する太陽放射データを提供します。日射量の予測技術の開発に関しては様々なアプローチが試みられていますが、その精度を評価するための面的情報を持つ決定的な日射データは存在しないため、 衛星観測に基づく日射量は予測精度の評価と改善に役立つことが考えられます。また、太陽光発電・太陽熱利用の普及に伴ってHEMSやBEMS、マイクログリッドによる制御理論構築とその運用のために広域における日射量の現況値を利用することが考えられます。
農業利用と食料安全保障への応用
農作物において日射と適量の降水は欠かせない生長要素です。日射の不足は農作物の生長に大きな影響を及ぼしますが、過度な日射は蒸発散を助長して土壌から水分を奪います。また、農作物は種類によって多様な生態を持つことから最適な日射と土壌水分量は異なります。近年において目覚しい発展をみせる精密農業は農地・農作物の状況をより良く知ることで農作物の収量・品質の向上及び環境負荷低減を助ける農業管理の高度化技術ですが、これまで勘や経験に基づいて行われていた管理を農作物と圃場の正確な状況を観測・観察によって把握し情報を積み上げることによって達成します。リモートセンシングによる応用では圃場単位における 農作物の状態把握や圃場内の環境管理などに衛星・航空機観測のデータが活用されています。一方で農作物の収量予測は古くから気象条件等をパラメータとする経験的手法が試みられていますが、近年では作物生長モデルを用いた収量推定手法も開発されており、多様な農作物への対応と収量把握・予測への試みが必要とされています。日照時間の減少、冷夏や渇水など気象条件による変化は農作物の収量に影響を及ぼし食料供給の不安定化要因ともなりますが、特に食料の多くを輸入に頼っている日本では国内外の様々な要素によって食料の輸入による安定供給、即ち必要なときに安定的に食料を入手できる安全策が必要となっています。また、世界的には飢餓・栄養不足が食料安全保障の課題とされており、1995年以降東アジア域が穀物輸入地域に転換していることなどから世界の穀物在庫は減少傾向にあると考えられています。本コンソーシアムでは精密農業等における農業の補助データとしての利用と、食料安全保障における広域の収量状態把握、即ちマクロとミクロの両者に資する太陽放射データを提供します。準リアルタイムで提供される日射量は広域における日射量の履歴として農作物の収量予測や広域のバイオマス推定における食料収量把握などに役立てることが考えられます。
社会インフラで最も気象情報を積極的に利用しているのは輸送や物流ですが、例えば鉄道や航空機、船舶は気象予報を参照して運行計画を立案し、当日の現況値を参照して運行計画を修正し運用します。これにより大規模な事故などのリスクを回避して安定的な運用を実現しています。現代の鉄道、航空機、船舶における自然災害を原因とする事故は非常に低く抑えられているように見えますが、これは社会インフラとして高い水準にあると言えます。電力などのエネルギー・インフラは高い安定性が求められるため、再生可能エネルギーの導入が進行しても様々な情報を利用して安定的に運用出来る社会インフラとして運用技術を早急に確立する必要があります。特に衛星観測に基づく面的情報を持った日射量は有効であると考えられます。日射量は気象・気候における基礎的なパラメータであり、我々人間の生活に密接な関わりがあることから医療や産業も含めて様々な応用が考えられるため広く門を開きつつ、エネルギー問題や環境問題を軸として気候研究の分野で培われた放射を取り扱う技術の研究成果を広く多くの分野へ提供します。本コンソーシアムは分野の壁を取り払うことで新しい研究やビジネスを推進し、社会を活性化することで社会貢献を果たすことを目的とします。また、これらの活動を世界展開することで世界への貢献を目指します。
本コンソーシアムは衛星観測データに基づく太陽放射データ、主に日射量を広く公開し各分野で役立てるための活動を行います。そのためのデータ配布の取り組みと利用促進に関わるサポートを実施します。準リアルタイムで解析される日射量を速報として利用する形態、蓄積されたデータと過去データを履歴として利用する形態が考えられますが、これを配布するための準リアルタイムデータ配信サーバ、及びアーカイバを本コンソーシアムにて管理します。また、より良い利用方法と、より新しいデータプロダクトに関する意見の取りまとめを行い利用者と開発者にフィードバックします。
太陽放射コンソーシアム
(特定非営利活動法人)
連絡先/事務局 〒261-0023
千葉市美浜区中瀬1-3 幕張テクノガーデンB18
TEL: 043-274-9012
FAX: 043-299-6736
E-mail:
info-consortium@amaterass.org
URL: http://www.amaterass.org
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